チューニングはおこたるべからず

チューニングはおこたるべからず
若手ヴァイオリニストの女の子と、12個年上の団長とが二人きりで愛ある“演奏会”をします。“チューニング”は念入りに、焦らして……。
あたしはヴァイオリンに人生を捧げてきた。けれど、団に加わってからはいつも視界には団長がいて、時には思考にまで入り込んできて、でもそうやって妨害されるのが楽しくて嬉しいから、いっそ団長のものになっちゃいたいなぁなんて…誰にも言ったことないけどね。
だって団長はあたしより12年も長く生きてるし、こんなお子様のことなんて女の子として見てくれるはずない。やっと18歳になったけど、彼の中ではずっとお子様ヴァイオリニストね。

ところであたし、チューニング[調弦]はささっと終えちゃうのよねー。ちっちゃい頃からずっとヴァイオリンと一緒だし、外れた音が出たらすぐ分かっちゃうもの。でも、初めて使う楽器とか、久々に使う楽器なら、時間をかけるのもいいかもしれないわね!
ねえどうする?もしもよ、もしも団長があたしのことそうやって念入りに調律して手をつけてくれる日が来たら!きっと一撃必殺を決めてくれるわ!そしたら子供の髪の毛は黒がいいわね……子育てってどのぐらいしんどいかしら……やだー!恥ずかしい!そもそも、そんなことあるわけないじゃないあたしったらっ。

(本文47ページ)

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